よつ葉乳業は、「自分たちの手で、より良い牛乳と乳製品をお客様にお届けしたい」という酪農生産者の想いから生まれた会社です。創業当初のその想いを継承し続けるため、よつ葉乳業には、社員が実際に生乳生産地に滞在し、酪農を体験する「酪農実習」という研修制度があります。
今回、オンラインショップ運営を担当する社員 阿部と、マーケティング業務を担当する社員 松本が、酪農実習を実施してきました。
よつ葉製品の原料となる生乳がどのような環境で、どのような人の手によって生まれているのか。
現場で感じたこと、酪農家さんの想いをお届けします。
滝上町の渓谷遊歩道からの風景
酪農実習で訪問した滝上町は北海道オホーツク地方に位置し、春に咲き誇る芝桜と、日本一の生産量を誇るハッカで有名な町です。
町内には大小さまざまな滝があり、その上に町が形成されたことが町の名前の由来だそう。
人口は二千人強、自然豊かな環境の中で酪農家さんたちは毎日、牛と向き合っています。ここで育つ牛たちは、澄んだ空気と清らかな水に恵まれ、健やかに暮らしています。
今回お世話になったのは、滝上町の長屋 辰之介さんが経営する長屋牧場です。
搾乳牛60頭、総飼養頭数90頭を、弟の長屋善之介さんと従業員1名の計3名で管理されています。
限られた人数の中で、牛の健康管理から土づくりまでも担っている点に、大きな特徴があると感じました。
長屋さんは、牛の健康と土地の持続的な活用を大切にしながら、日々試行錯誤を重ねて牧場経営に取り組まれています。
牧草づくりから牛舎環境の整備まで、一つひとつの工程に明確な意図とこだわりがあり、「長い時間をかけてより良い状態をつくる」という姿勢が印象的でした。
目の前の結果だけでなく、将来の牧場のあり方を見据えた取り組みは、酪農という仕事の奥深さを実感させてくれます。
今回の実習では、搾乳作業を軸に、子牛の飼育や牛舎の清掃、土づくりに関わる作業など、4泊5日という短い期間の中で、酪農の仕事の一部を体験しました。
一つひとつの作業が独立しているのではなく、すべてがつながり合いながら生乳生産を支えていることを、現場で実感しました。
搾乳は、朝と夕方の1日2回、毎日欠かさず行われます。
実習では、朝5時半というまだ暗い時間帯から作業が始まりました。
搾乳は単純な作業のように見えますが、実際には多くの工程が積み重なっています。
牛舎に牛を入れるところから始まり、搾乳前の乳房の洗浄・殺菌、拭き取り、前搾りといった工程を丁寧に進めていきます。
これらはすべて、牛の健康状態を確認し、安全で品質の高い生乳を確保するための重要な作業です。
わずかな手順の違いが衛生状態や品質に影響するため、常に気を抜くことができません。
また、乳牛は毎日搾乳をしてあげないと病気になってしまうため、作業者自身の体調や天候に関わらず毎日続けなければならない点にも大きな責任を感じました。
酪農家の方々が日々当たり前のように続けているこの作業が、私たちの食卓を支えていることを実感しました。
子牛の世話は、未来の乳牛を育てるための重要な仕事です。
ミルクや水、飼料を与える作業は一見シンプルに見えますが、実際には細やかな観察と判断が求められます。
特に印象的だったのは、乾草の量の調整でした。
スコップのような道具で量りやすい配合飼料とは異なり、乾草はフォーク状の道具で刺して運ぶため、どうしても一度に取れる量にばらつきが出てしまいます。
そのため、決まった量を機械的に与えることが難しく、食べ残しの状況や牛の様子を見ながら調整する必要があります。
与えすぎても無駄になり、少なすぎても成長に影響が出るため、「ちょうどよい量」を見極めるには経験が必要だと感じました。
また、子牛が勢いよくミルクを飲む姿や、一頭一頭の様子の違いを観察する中で、命を育てる仕事の責任とやりがいを強く感じました。
食べ残した乾草をベッド代わりに敷く作業の様子
牛舎の清掃作業は、牛の健康を維持するうえで欠かせません。
子牛の小屋では、食べ残した乾草をベッド代わりに敷き、その上で生活しています。
時間が経つと汚れてくるため、定期的に新しい乾草と交換します。
ここで印象に残ったのは、取り除いた乾草が単なる廃棄物ではなく、堆肥として再利用される点です。
糞と混ざった乾草は発酵させ、土壌改良に活かされます。
このように、牛舎の中で生まれたものが再び土へと還り、次の牧草を育てる。
酪農の現場には、昔から続く無駄のない循環型の仕組みが構築されていることに驚きました。
左:牧草地から土壌サンプルを採取
右:採取した土壌サンプルを潰す作業
酪農というと牛舎での作業が中心のイメージがありますが、実際には土づくりも重要な要素です。
今回の実習では、牧草地ごとに複数箇所から土壌サンプルを採取する作業を体験しました。
採取した土は分析にかけられ、不足している成分だけを補うように肥料を調整しているとのことです。
一般的にはすべての成分が含まれた肥料を使用するケースも多い中、必要なものだけを見極めて投入するという方法に、強いこだわりを感じました。
さらに、この取り組みはすぐに結果が見えるものではなく、長い年月をかけて土の状態を改善していくものです。
将来の牧場のために粘り強く取り組み続ける姿勢に、深い感銘を受けました。
搾乳を終え、乳牛が自ら牧草地に戻った後、牧草地のゲートを閉める
放牧されている牛を牛舎に戻す作業についても、印象的な学びがありました。
事前には、人や犬で追い込むようなイメージを持っていましたが、実際には大きく異なります。
搾乳の時間になると、牛たちは自ら牛舎へ戻ってきます。
これは、搾乳時に与えられる餌や、乳を搾ってもらうことへの習慣があるためです。
つまり、人が無理に動かすのではなく、牛の行動や性質を理解し、それを活かした管理が行われているのです。
こうした仕組みは、牛にストレスをかけないだけでなく、作業効率の向上にもつながっています。
酪農は力仕事であると同時に、非常に合理的で計算された仕事であることを実感しました。
実習の中で、長屋牧場を営む長屋 辰之介さんにお話を伺いました。
その言葉からは、「生乳を生産する」という仕事の奥にある、大切な価値が強く伝わってきました。
土地と向き合い、試し続ける仕事
先々代、先代から受け継いだ滝上町の牧場での酪農について長屋さんは、「簡単ではないけれど、その分やりがいがある」と話します。
気候は厳しく、土も扱いやすいとは言えない環境です。
それでもこの土地で酪農を続ける理由は、「挑戦できる余地があるから」です。
牧草づくりにおいても、肥料や草の種類に正解はありません。
いくつもの方法を試しながら、その土地に合ったやり方を探していく。
「やってみないと分からない。失敗しても、それは次につながる」
その言葉からは、自然と向き合いながら、自分なりの答えを積み上げていく酪農の姿が感じられました。
牛と向き合うということ
「牛にも個性がある」と長屋さんは話します。
懐く牛もいれば、距離を取る牛もいる。
だからこそ、一頭一頭に合わせた接し方が必要になります。
特に大切なのは、「ストレスをかけないこと」。
牛はとても繊細で、その状態がそのまま生乳の質にも影響します。
やさしく声をかけること、丁寧に扱うこと。
その積み重ねが、牛の状態を大きく左右するのだと学びました。
「やってみる」ことで見える景色
長屋さんはこれまで、放牧や牛舎づくりなど、さまざまな挑戦を重ねてきました。
初めて牛を外の牧草地に出した時、すぐに草を食べてくれるわけではなく、うまくいったとは言えない状況だったそうです。
それでも、牛たちも少しずつ環境に慣れ、やがて自分から牧草を食べるようになっていきました。
そうした過程を経て、牛たちが外へ出ていったその光景を目の前にしたとき、「やり切った」という実感があったと語っていました。
「結果だけを見れば簡単に見えるけれど、その裏には試行錯誤がある」
長屋さんのこの言葉は、酪農という仕事の本質をそのまま表していました。
次世代への想い
「酪農は、最終的には自分が納得できるかどうか」
長屋さんはそう話します。
誰かの正解をなぞるのではなく、自分で考え、試し、また修正していく。
その繰り返しの中で、自分なりの形を見つけていく仕事です。
「失敗してもいいから、自分でやってみることが大切」
この言葉には、これから酪農に関わる人だけでなく、ものづくりに関わるすべての人に通じるメッセージが込められているように感じました。
牛乳一杯に込められているもの
長屋さんの話を聞く中で、強く印象に残ったことがあります。
それは――
牛乳は、ただの飲み物ではないのだ、という気づきでした。
自然の中で育つ牛、日々の体調を見ながら積み重ねる世話、そして土地の状態まで含めた環境づくり。
その一つひとつが重なり合い、ようやく私たちのもとに届く。
そんな当たり前の事実に、改めて気づかされました。
普段、何気なく手に取っている一杯の牛乳。
その背景にある時間と手間、そして人の想い。
これから牛乳を飲むたびに、そのことをふと考えてみたくなる――そんなインタビューでした。
酪農家の方々への想いと、これからの自分の役割
今回の実習とインタビューを通じて、酪農家の方々の仕事に対する考え方が大きく変わりました。
毎日欠かすことのできない作業を積み重ねながら、牛の状態や自然環境と向き合い続けるその姿に、心からの尊敬の念を抱くようになりました。
また、その営みの上に、私たちが日々口にしている牛乳や乳製品が成り立っていることを実感し、改めて感謝の気持ちを強く感じました。
よつ葉乳業の社員として牛乳・乳製品を消費者の皆様へお届けする立場として、一杯の牛乳の裏側にあるストーリーや価値まで、丁寧にお客様へ届けていきたい――そう強く思うようになりました。
最後に、この記事を読んでくださった皆様へ。ぜひ、その牛乳一杯の背景に想いを馳せながら、よつ葉の牛乳や乳製品を味わってみてください。