esprit de hitotema (エスプリ・ドゥ・ヒトテマ)
箕脇シェフのルーツは、ご両親が営んでいた実家のパン屋にあります。幼い頃からパンに囲まれて育ち、ごく自然な流れでパン職人への道を歩み始めました。
修業の第一歩として選んだのは、地元・神戸にある大手ベーカリー。そこでパン作りの厳しさと基礎を徹底的に叩き込まれます。 しかし、当時の箕脇シェフには若さゆえの葛藤がありました。「とにかく朝が早くて、体力的にしんどい。もっと遊びたい盛りだったんです。」と当時を振り返って笑います。過酷な労働環境の中でパン作りに苦労していたこともあり、一度パン業界から完全に離れるという決断を下します。
飛び込んだ先は、パン作りとは全く無縁の「鉄道業界」でした。「もともと車の運転などが好きだったので、電車の運転をする仕事は結構肌に合っていたんです。」と語る通り、異業種でも頭角を現し、最終的には管理職を任されるまでになりました。
安定した職を手に入れ、そのまま鉄道業界でキャリアを積んでいくかに見えました。しかし、30代半ばに差し掛かった頃、シェフの心にある思いが芽生えます。「安定に甘んじることなく、もっと頑張れる自分でありたい。」そう考えた時、ふと立ち止まって自分を見つめ直しました。
「自分には何ができるだろうか。結局、自分にはパンづくりしかないのではないか。」 その気づきが、シェフを再びオーブンの前へと呼び戻しました。
決意を固めたシェフは、「3年間だけ」という明確なタイムリミットを自分に課し、地元で有名なパン屋の門を叩きます。一度業界を離れていたため、昔の感覚が薄れている部分もありましたが、レシピを見返しながら「こんなのあったな、懐かしいな」と感覚を取り戻し、再びパン作りに没頭。覚悟を決めた3年間の再修業を経て、ついに自身の店「hitotema」を谷中にオープンさせたのです。
谷中の1店舗目は瞬く間に人気店となりましたが、シェフはそこで満足することなく、今回2店舗目のオープンに踏み切りました。
新店舗の立地として選んだのは、マンションやアパートが密集しているにもかかわらず、周辺にパン屋が全くないという住宅街。30店舗近くの物件を見て回り、「自分の目が届く、すぐ移動できる範囲内で」という条件を満たすこの場所に決めました。
2店舗目となっても、店名はもちろん、根底にあるコンセプトは1店舗目から一切変わっていません。それは「お客様の食に対する安心・安全」と「添加物をできる限り使わないこと」です。「やっぱりお客様の口に直接入るものなので、添加物だったり農薬だったり、そういったものは極力排除していきたいんです。そして、できる限り国産の素材を使うこと。」
これが「hitotema」のパン作りの絶対的なルールです。 利益や効率を優先すれば、材料はいくらでもあります。しかし、箕脇シェフはそういった道を選びません。遠回りであっても、本当に安心できる素材を厳選し、文字通り「ひと手間」をかけておいしいパンを焼き上げる。そのブレない実直な姿勢こそが、多くのお客様を惹きつけてやまない「hitotema」の最大の魅力なのだと感じます。
あんバター
「できる限り国産のものを」「添加物を極力排除した安心・安全なものを」そんな厳しい基準を持つ箕脇シェフが、様々な材料を試行錯誤する中でたどり着いたのが、よつ葉乳業の製品でした。
よつ葉乳業との出会いは約3年前、ちょうどシェフが自身のパンの味をさらに追求しようと、生地や素材を一から見直していた時期でした。
最初は決まった取引業者がおらず、自分自身で様々なメーカーのバターを取り寄せては試す日々が続いたそうです。「実は最初、よつ葉さんを取り扱ってくれる問屋さんが見つからなくて、本当に苦労しました。」
それでも、よつ葉のバターを使いたいというシェフの熱意は変わりませんでした。なぜそこまでよつ葉のバターに惚れ込んだのでしょうか。シェフはその理由を「共存性の高さ」だと語ります。
「よつ葉さんのバターは、コクがあって風味がとても豊かです。でも、決して他の素材の味を邪魔しない。パンの主役である小麦の香りや、他の副材料の良さをしっかりと引き立てながら、自分自身も確かな存在感を出している。素材同士がすごく上手に『共存』できるんです。それがパン職人目線としては非常に使いやすいですね。」
現在、「hitotema」で一番よく売れている大人気商品はクロワッサン。そして、塩パンや、店の主力である湯種食パン。これらのお店の看板メニューには、すべてよつ葉のバターが惜しみなく使われています。
「よつ葉のバターを使って焼いたクロワッサンは、食べた時の風味がもう、全然違います。」とシェフも太鼓判を押します。「国産」であり、「信頼できる商品」であり、そして何より「おいしい」箕脇シェフのパン作りにかける情熱と、よつ葉乳業の製品づくりへのこだわりが重なり合った時、お客様を笑顔にする、パンが生まれるのです。