「乳業メーカーがパンケーキミックスを?」から始まった、よつ葉のパンケーキミックス。愛されるロングセラーの裏側にあるもの。

乳製品の話

「乳業メーカーがパンケーキミックスを?」から始まった、よつ葉のパンケーキミックス。愛されるロングセラーの裏側にあるもの。

2014年の発売以来、よつ葉乳業のバターミルクパンケーキミックスは、多くの食卓と現場で愛され続けているロングセラー商品となっています。


北海道産の小麦粉と砂糖、そして乳業メーカーだからこそ実現できたバターミルクパウダーの配合。


シンプルな素材による商品開発を追求する企業姿勢がこの商品には詰まっています。本記事ではその秘密をご紹介します。


パンケーキミックス

「よつ葉乳業が、パンケーキミックスを売る」


実は、小麦粉主体のプレミックス製品を自社ブランドで世に出すという発想は、乳業メーカーである私たちにはなかったのです。


きっかけは、北海道の製粉メーカーさんからのご提案でした。

「よつ葉の乳原料と、こだわりの小麦粉を掛け合わせたパンケーキミックスを一緒に作りませんか」と声をかけていただいたのです。パンケーキブームが少し落ち着きを見せ始めた頃、ひっそりと、しかし熱い想いとともに私たちの挑戦は始まりました。


業務用から家庭用への「転換」


今でこそ家庭用として定着しているこの製品ですが、実は開発当初は「パンケーキ専門店」向けの業務用製品を目指していました 。


東京の有名店へ何度も足を運び、ミックス粉の内容や取引価格に関する聞き取り調査を実施しました。結果、そこで理解したのは、プロの世界のシビアな現実でした。専門店が使っているミックス粉は驚くほど安く、私たちの「素材の良さを最優先する」こだわりでは、価格競争に太刀打ちできなかったのです。


一度は断念しかけた道でしたが、改めて市場を調査すると、あることに気づきました。家庭で手軽に使えるものの中に、私たちが理想とするような、北海道産素材を活用し、添加物を最小限に抑えたようなミックス粉が、世の中にはほとんど存在しなかったのです。


「それなら、家庭でお店のクオリティを再現できる、最高の一袋を作ろう」この決断が、現在のロングセラーへと繋がる大きな転換点となりました。


北海道産小麦へのこだわり


パンケーキの骨格を作る「小麦粉」について、私たちは一切の妥協をしませんでした。パートナーである製粉メーカーさんと共に辿り着いたのは、北海道産品種の小麦の個性を最大限に活かすことです。


主に使用しているのは、北海道を代表する品種「きたほなみ」という小麦です。


きたほなみ

非常に口当たりが良く、ソフトな食感を生み出します 。

私たちがパンケーキに求めていたのは、ミルクの風味を引き立てる「しっとり感」と「くちどけ」です。


きたほなみが、ふんわり、しっとりとした柔らかさと軽い口どけをもたらし、私たちが求める理想のパンケーキの食感を実現しています。


バターミルクパウダーの正体


このパンケーキミックスの最大の特徴は、バターミルクパウダーの豊富な配合です。聞き慣れない方も多いかもしれませんが、これこそが私たちのパンケーキの味を決定づけているポイントです。その理由は、その独特の味わいと機能性にあります。


バターミルクは、生クリームからバターを作る工程で生まれる副産物です。乳たんぱく、乳糖、ミネラル等の生乳に含まれている成分が残っているため、やさしい乳味と自然なコクが特徴です。このバターミルクを粉末化したものがバターミルクパウダーです。


さらに、バターミルクパウダーには、水分と脂肪をなじませる性質があります。これを「乳化作用」と呼びます。パンケーキの生地に加えると、この乳化作用が機能し、生地がより滑らかに、より均一に混ざります。


焼き上がったパンケーキは、しっとりと柔らかく、口の中でスッと溶けるような軽やかな口どけが生まれます。これが、バターミルクパウダーを豊富に配合することで実現できる、独特の食感なのです。


原料にバターミルクパウダーを使用していることが、このパンケーキミックスの最大の価値であり、他社製品との明確な違いです。


シンプルだからこそ難しい。開発の葛藤と工夫


開発は、想像以上に試行錯誤の連続でした。なぜなら、シンプルな素材だけで「おいしさ」を追求する必要があったからです。


開発初期、社内の開発チームは世の中の様々なパンケーキミックスと、自分たちが開発しているミックスを実際に焼いて比較してみました。その時、はっきりとした違いが見えてきたのです。


他社のパンケーキミックスは、焼くとしっかりとした高さに膨らみます。開発当時は厚みのあるパンケーキが「映える」商品としてブームになっていました。当初、社内からも「もっと膨らみを出したい」という声が上がっていました。


そこで、ベーキングパウダーの配合を増やしてみました。すると確かに膨らみは出ましたが、微かな苦みが感じられたのです。味が微妙に変化するという、別の問題が生じました。


「膨らむのが本当に良いことなのか。」という葛藤が、開発チーム内で生まれました。見た目の華やかさも大事だけど、素材のおいしさがちゃんと届けられる商品を作ろうという方向にたどり着きました。


添加物を必要最低限にするからこそ、バターミルクの豊かな香りと小麦の甘みがまっすぐに伝わる 。それこそが、乳業メーカーである私たちが胸を張ってお届けできる「よつ葉のパンケーキ」の形でした。


あえて「大さじ1杯のサラダ油」をお願いする理由。手軽さよりも優先した、不器用なこだわり


次に向き合ったのは、油脂の扱い方についてです。これが、私たちのパンケーキミックスで不器用なこだわりが詰まった部分かも知れません。


私たちのレシピには、少し変わった点があります。それは、生地の中に「大さじ1杯のサラダ油(植物油)」を加えていただくことです。


「乳業メーカーのパンケーキなのだから、バターで焼けばいいのでは?」と思われるかもしれません。


実は開発段階では、バターで焼くマニュアルも検討していました。しかし、バターには約18%の水分が含まれており、フライパンで熱するとどうしても焼きムラができてしまうのです。誰が焼いても、パッケージのような美しいキツネ色の焼き色を実現するには、サラダ油が最適だという結論に達したのです。


またパンケーキミックスの中には、乾燥卵を入れて「水だけで焼ける」という商品も存在します。卵を用意していただく手間は掛かってしまいますが、出来るだけおいしいパンケーキを召し上がっていただきたい。そんな不器用ながら、おいしさを大切にしたこだわりが、この一袋には詰まっています。


「引き算」の美学:原材料表示の裏側


「よつ葉の製品は食品添加物不使用だから安心」


ありがたいことに、お客様からそんなお声をいただくことがよくあります。


しかし、それは誤解です。事実、このパンケーキミックスには、ふっくらと焼き上げるために必要最低限の「ベーキングパウダー」を使用していますが、これは食品添加物ですので、この商品は「食品添加物不使用」ではありません。


ただ、よつ葉乳業では、何か課題が生じた際は出来るだけ食品添加物に頼るのではなく、創意と工夫で乗り越えるような製品製造を心掛けています。


それによって、多少手間がかかったり製造効率が下がったとしても、安全・安心を求めるお客様の期待に応えたいからです。


一方でパンケーキミックスのようにどうしても必要な場合は、最低限の量を使用した製品もあります。


この商品は「香料、着色料、乳化剤は一切使用していおりません」と記載させていただいています。


焼きたての香りを演出する香料や、品質を保つための添加物。それらを削ぎ落としたのは、バターミルク本来の甘い香りと、北海道産小麦の風味を主役にしたかったからです。砂糖の量も、実は他社の製品に比べて控えめになっていると思います。一口目のインパクトよりも、毎日食べても飽きない、噛み締めるほどに素材の味が広がる、そんな味を目指しました。


生地そのものが主役になる。「スコーン」のアレンジご紹介


私たちのパンケーキミックスは、香料を使用せずシンプルな素材の香りが感じられる仕上がりですので、パンケーキ以外にもアレンジしやすいという点も特徴の一つです。


中でも、私たちが公式オンラインショップでもレシピをご紹介し、強くおすすめしているのが「スコーン」です。




ご家庭でスコーンを焼く際、ナッツや細かく砕いたチョコレート、ココナッツなどを混ぜて楽しむ方も多いと思います 。もちろんそれもおいしいのですが、このパンケーキミックスで焼いたスコーンは、具材がなくても「生地そのもの」がおいしく、しっかりとした満足感を得られるのが特徴です。


バターミルクパウダーと北海道産小麦の風味がしっかり活きているため、焼き上がりはとても軽く、パクパクと食べ進めてしまうおいしさです。また、パン屋さんやケーキ屋さんといったプロの職人の方々の中には、このミックスの核となっている「バターミルクパウダー」そのものに興味を持ってくださる方もいらっしゃいます。


プロの現場では、自由に配合を組むために、複数の原材料があらかじめ混ざっているミックス粉は敬遠されがちですが、バターミルクパウダーの持つ独特なミルクの風味や乳化作用を活かし、食パンや焼き菓子をよりおいしくするために、バターミルクパウダーパウダー単体をご活用いただくケースもあるのです 。


(※バターミルクパウダー単体も、オンラインショップで販売しています。)



​お土産にも、プロの味の再現にも。直営店とオンラインショップの広がり


よつ葉乳業の製品といえば、牛乳やバター、チーズなど「要冷蔵」の商品がほとんどです。その中にあって、常温で持ち運びができるこのパンケーキミックスは、少し珍しい存在です。


オンラインショップでは、常温で日持ちがするため、同じく常温品のレトルトスープなどとセットで購入していただくことも多く 、コンスタントにお客様に選ばれ続ける商品へと成長しました 。


また、札幌と大阪の「ミルク&パフェ よつ葉ホワイトコージ」や、東京の「よつ葉ミルクプレイス」といったよつ葉の直営カフェでは、実際にこのパンケーキミックスを使ったメニューを提供しています。

(※ミルク&パフェ よつ葉ホワイトコージ 新千歳空港店ではパンケーキを使ったメニューの販売はございません。)


お店でプロが焼き上げたパンケーキを味わっていただき、その帰り際に、ご自宅用のお土産としてこのミックス粉を買って帰られるお客様もたくさんいらっしゃいます。


「お店で食べたあの味を、自宅でも」そんな風に、私たちのこだわりを直接体験していただき、ご家庭の食卓へと繋がっていく流れができていることを、私たちはとても嬉しく思っています。



よつ葉乳業が届ける「北海道のおいしさを、まっすぐ。」


今でこそ多くの方に愛していただけるようになりましたが、発売当初、社内の営業担当からは「価格が高くてスーパーで売るのは難しい」と厳しい言葉をかけられたこともありました。


それでも私たちがこの製品を世に送り出したのは、北海道の素材が持つ本物のおいしさを、シンプルな素材構成でまっすぐにお届けしたかったからです。


流行り廃りの激しい食品業界ですが、私たちはこれからも「素材の良さを生かす」という姿勢を変えるつもりはありません。時代がどれほど便利になっても、卵を割り、牛乳を注ぎ、丁寧に混ぜて焼く。


そんな「ひと手間」の先にある、安心とおいしさ、笑顔あふれる食卓を支え続けていきたい。「北海道のおいしさを、まっすぐ。」この言葉に込めた私たちの想いを、この一袋から感じていただければ幸いです。